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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和52年(少)1461号 決定

少年 S・O(昭三一・一二・一三生)

主文

本人を医療少年院に送致する。

医療少年院に収容する期間は昭和五三年七月一八日までとする。

理由

(非行事実)

本人は、昭和五〇年一二月一二日当裁判所において、福岡保護観察所の保護観察に付され、以来保護観察中の者であるが、昭和五一年三月頃から仕事を怠けることが多くなり、昭和五二年一月頃より定職に就かず、無断外泊、外出をしてはキヤバレー等で遊興を続け、更にパチンコ、賭麻雀、競輪、競艇等に多額の金を使う生活をしてきた。そしてその金は殆んど父に強要して貰つていたが、それでも足らず同年二月五日頃父にアパートを借りて真面目に働く等と嘘を言つて一〇万円を出させ、同年六月一九日自宅の留守を狙つて仏壇を持出して一〇万円で売却をするなど、このまま放置すればその性格、環境に照らして将来罪を犯す虞れがある。

(法令の適用)

少年法第三条第一項第三号イ、ロ、ニ

(保護処分に付する理由)

本人は中学二年生の頃から遊び癖がつきボーリング場次いでパチンコ店に出入りするようになり、昭和四七年七月九日には遊びの金に困つて強盗致傷を犯し不処分になつたが、その後も反省することなく更に飲酒やキヤバレー等に行くことを覚え、昭和五〇年一一月七日に一回、同月九日に二回いずれも出刄庖丁を使つて強盗未遂の事件を起こし、昭和五〇年一二月一二日当裁判所において福岡保護観察所の保護観察に付された。そして一時父の仕事(電気工事)等を手伝つたり、他の電気工事店等に勤めたが、前記の如く昭和五二年一月頃より仕事をしなくなり、パチンコ、キヤバレー等の遊びにふけり、更に賭麻雀、競輪、競艇等に金を使い、その金を父に要求し父はその回数、額の多さに困り果てたものの金を出さなければ更に強盗等の犯罪を犯すことの恐れもあつて常識では考えられない多額の金を本人に渡していた。一方その間保護観察官、担当保護司の熱心な指導が続けられたが改善の意欲は全くみられず、昭和五二年六月二七日福岡保護観察所長から当裁判所に虞犯通告がなされたものである。

本人の資質等についてみるに、知能は準普通級であるが、その性格は小心、気弱ではあるが、わがままで行動に抑制がきかず感情、欲望のままに衝動的にふるまい、怠惰で刹那的な快感を追求しやすい。更に脳波上てんかんが認められ、現在までに現実の疾状は出ていないが大発作が起きる可能性はあり、これは今までの非行の直接の原因ではないようであるが、全く関連がないとはいえないと鑑別結果通知書や精神科医が指摘している。

家庭は父母ともに本人の指導には全く自信をなくしてしまつている。

以上を綜合すると、本人はすでに二〇歳を超えているが、この際施設に収容して上記のてんかんの治療とともにその性格、生活態度の矯正をはかり、健全な勤労精神を持ち社会で独立した生活ができるように教育する必要があると考える。よつて本人を医療少年院に送致することとし、その期間は非行事実、非行性の程度、てんかんの治療等諸般の事情を考慮して昭和五三年七月一八日までとするのを相当と認める。

(結論)

よつて犯罪者予防更生法第四二条、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 伊藤敦夫)

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